高齢者の栄養素の不足のリスクとは?症状や対策を解説

高齢者の栄養素不足は「身体的要因」「社会的要因」「精神・心理的要因」の3つによって起こります。栄養不足を放置すれば低栄養になり、健康に悪影響が出るおそれがあります。

■この記事でわかること

  • ・高齢者の栄養素の不足による症状とリスク齢者向けの食事サービスの種類とその特徴
  • ・高齢者の栄養素の不足が起こる原因
  • ・高齢者の栄養素の不足を防ぐ対策方法
 

高齢者の栄養素不足で身体に起こる症状とリスク

栄養素の不足が進行すると、低栄養になり、身体にさまざまな症状とリスクが発生します。

低栄養とは、健康的に生活するために身体に必要な栄養素が足りていない状態のことを言います。

低栄養で起こる症状

低栄養によって起こる症状としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 体重の減少
  • 活力が湧かない
  • 風邪などの感染症にかかりやすく、治りが遅い
  • 傷などの治りが遅い
  • 下半身や腹部がむくむ
  • 筋力の低下
 

また、食事の量が減ると、それにともない水分の摂取量も減るため、脱水症状になることもあります。

低栄養と脱水症状の両方で起こる症状は、次のとおりです。

  • 食欲不振
  • 口の中の乾燥
  • 皮膚の乾燥・弾力のなさ
  • 唾液の粘り(べたべたする)
 

低栄養は負のスパイラルに陥りやすい

食事量の低下によって低栄養になると、筋肉量が減少して筋力の衰えとともに基礎代謝が低下し、疲労感や活力低下につながり、身体機能も低下します。

そして、身体機能が低下すると活動量が減少し、エネルギー消費量も低下します。

エネルギー消費量の低下とともに食欲が落ち、食べる量が減ると、さらに低栄養が進行する、負のスパイラルに陥ります。

栄養成分表示を使って、高齢者の低栄養を防ぐ

引用:栄養成分表示を使って、高齢者の低栄養を防ぐ|消費者庁

負のスパイラルをどこかで断ち切らなければ、低栄養の進行を止めることは難しいでしょう。

症状に気づかずに低栄養状態が続くと、以下のような状態に陥るリスクが高まります。

■サルコペニア

生活習慣などが理由で筋肉量が減少し、身体機能や筋力が低下している状態

 

■フレイル

筋力や心身の活力の低下によって、心と身体が虚弱な状態(健康と要介護の間)

 

■ロコモティブシンドローム

運動器の障がいによって、立つ・歩くといった移動機能が低下した状態

 

監修者コメント

食事摂取が減ってしまうと、低栄養のスパイラルにハマってしまいます。食欲が落ちてきたと感じたら、これまでの食事を見直す必要があります。

高齢者が栄養素の不足を起こす原因

高齢者が栄養素の不足を起こす要因には、「身体的要因」「社会的要因」「精神・心理的要因」の3つがあります。

下表は、それぞれの要因と、その主な原因をまとめたものです。

要因 原因
身体的要因
  • ・筋肉量・筋力の低下
  • ・腰やひざなどの関節痛
  • ・噛む力の低下
  • ・味覚の低下
  • ・消化器官の問題(病気)
社会的要因
  • ・閉じこもり
  • ・交通手段のなさ(過疎地域)
  • ・経済的な困窮
精神・心理的要因
  • ・配偶者やペットとの死別
  • ・「身体が疲れやすくなった」のように、加齢による身体的な衰えによる喪失体験

高齢者が栄養失調にならないための食事や対策

高齢者が栄養素不足を避けるためには、食事の取り方と意識づけが重要です。

ここでは、食事・栄養のポイントと、栄養素の不足にならないための対策について解説します。

高齢者の食事・栄養のポイント

高齢者の食事・栄養のポイントには、次の4つのポイントがあります。

高齢者の食事・栄養のポイント

1日3食しっかり食べる

加齢によって食欲が落ちると、食事の回数を減らしてしまいがちです。

しかし、1食あたりに食べられる量も少なくなっているため、食事の回数まで減ってしまうと、必要な栄養素を接種できなくなってしまいます。

そのため、できるだけ3食食べることを心がけることが大切です。

毎日決められた時間に食事を取ると生活リズムが整い、心身の状態も安定します。

精神・心理的要因で食べられなかった場合は、心身の状態が安定することで、少しずつ食事への意欲が湧いてくることでしょう。

栄養バランスを考えた食事を取る

菓子パンや袋麺類、カップラーメンなどの加工食品の1品で済まさずに、主食・主菜・副菜が整った食事で、栄養バランスを考えた食事にすることが大切です。

とくに、肉、魚、卵、大豆製品、乳製品などのたんぱく質は、毎食1品取り入れましょう。

栄養バランスを考える際には、厚生労働省と農林水産省が公表している「食事バランスガイド」を参考にするのがおすすめです。

食事バランスガイド

引用:「食事バランスガイド」について|農林水産省

昔からの日本食では「一汁三菜」が、栄養バランスが整っている食事だと言われています。

一汁三菜は、主食・主菜・副菜・乳製品または果物を、下記の図で表しています。

ただし、毎食汁物をつけると塩分過剰になり、高圧症にもつながりやすいため、食べる方の塩分の摂取制限にあわせて、汁物は1日1杯程度に調整しましょう。

一汁三菜

引用:高齢者の低栄養 | 健康長寿ネット|公益財団法人長寿科学振興財団

高齢者に不足しがちな栄養素を積極的に取得する

高齢者はたんぱく質とカルシウムが不足しがちなため、積極的な摂取を心がけましょう。

たんぱく質が不足すると低栄養になりやすく、進行しやすくなります。肉や魚、卵、大豆製品といった、タンパク質が多く含まれる食品を、毎食ひとつは取り入れるようにしましょう。

カルシウムは、骨粗鬆症の予防のために必要です。骨粗鬆症が進行すると骨折しやすくなります。カルシウムは、乳製品のほか、小魚や海藻、大豆製品から摂取できますので、健康的に活動するためにも、積極的に摂取しましょう。

高齢者の食事摂取基準については、下記のサイトを確認してください。

引用:高齢者の食事摂取基準 | 健康長寿ネット|公益財団法人長寿科学振興財団

栄養不足を防ぐための対策

食事以外にも、栄養素不足を防ぐ方法はあります。

具体的には以下のとおりです。

栄養不足を防ぐための対策

一つずつ見ていきましょう。

自身の栄養状態を把握する

まずは自身の栄養状態を把握しましょう。栄養状態は、BMI(体格指数)や体重減少率、血液検査によって把握できます。

ここでは、BMI(体格指数)の算出方法と、体重減少率について詳しく解説します。

BMIとは、体重と身長から、低体重や肥満の判定をする指標です。BMIの指数が18.5未満で低体重とみなされ、指数が下がるほど病気にかかりやすくなります。最も病気にかかりにくいBMIの指数は22です。

BMIの算出方法は次のとおりです。

■BMIの算出方法

BMI=体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))

 

次に、体重減少率の算出方法を紹介します。体重減少率は、低栄養状態であるかを判断するための指標です。

体重が6か月の間に2〜3kg、または1〜6か月の間に体重減少率が3%以上の場合、低栄養に陥っている可能性があります。体重減少率算出方法は次のとおりです。

■体重減少率算出方法

体重減少率(%) =(体重減少前の体重(kg)-現在の体重(kg))÷体重減少前の体重(kg)×100

 

より詳細な栄養状態は、血液検査から把握できます。

アルブミンという血液検査の項目は、血液中の主要なたんぱく質であり、栄養状態の指標です。気になる方は病院を受診してください。

適度に身体を動かす

適度に身体を動かすことにより、自然とお腹が空き、食欲が湧くようになるでしょう。運動は筋肉量の維持や、心の健康を保つ効果もあります。

心の健康も、栄養不足を防ぐための重要なポイントです。ストレスや不安、焦燥感など、心の健康に問題があると、摂食中枢が上手く機能せず、食欲が感じにくくなると言われています。

運動をすることで、心を安定させるホルモンが分泌され、ストレスに強い心身を作ります。

はじめは散歩や軽いジョギング、イスに座って足上げ運動するなど、無理のない運動で身体を動かしましょう。

ただし、すでに低栄養の方は、急に運動を始めると身体に負荷がかかってしまうことがありますので、まずは医師に相談してください。

共食する機会を設ける

共食(2人以上で食事を摂ること)の機会を設けると、食べることへの意欲が高まり、栄養不足の改善や予防につながります。

特に一人暮らしの方は、自炊をしても感想を貰えないため、 カップラーメンや菓子パン、加工食品などを食べる頻度が増え、栄養バランスが悪くなりがちです。

共食であれば、食事が楽しくなり、栄養を十分に取りやすくなるでしょう。

共食の機会を増やすには、定期的に家族と食事をする機会を作ったり、地域活動に参加したりするのが効果的です。

また、農林水産省によると、共食している方はストレスが少なく、自身が健康であると感じている割合が多いことがわかっています。

詳しくは下記をご覧ください。

引用:農林水産省の資料

栄養補助食品やサプリメントで栄養素を補給する

どうしても食欲が湧かない、料理する元気がない、栄養バランスが気になるなど、食事に不安がある場合には、栄養補助食品やサプリメントを活用し、必要な栄養素を補給しましょう。

最近では、プロテインバーや鉄分・カルシウム入りのウエハース、鉄・亜鉛・乳酸菌がバランスよく配合されたゼリーなど、さまざまな栄養補助食品があります。

間食に食べるお菓子を栄養補助食品に切り替えるだけで、不足しがちな栄養素をおいしく補給できるでしょう。

入れ歯について歯科医院に相談する

入れ歯の悩みがある場合は、積極的に歯科に相談し解消しましょう。

入れ歯があっていないと歯肉の痛みや食べにくさにつながり、固い食材や、食べること自体を避けるようになります。

やわらかい食材ばかり食べると噛む力が低下し、よりやわらかい食材を選んで食べるようになります。

このループが続けば、食事の偏りや食への欲求・関心が減少し、食事量が減って、低栄養に陥ってしまうでしょう。

入れ歯による食事の不安は、入れ歯を変えることで解消できます。歯科医院に相談して、入れ歯の悩みを解消しましょう。

オーラルフレイル→心肺機能の低下

高齢者向けの宅配弁当を頼む

低栄養を防ぐための食事は、栄養バランスやエネルギー量、塩分・糖分など、多くの点に配慮する必要があり、自分で作ることは簡単ではありません。

そこでおすすめするのが、高齢者向けの宅配弁当です。

宅配弁当なら、栄養バランスの整った、レパートリー豊富な食事を自宅まで届けてくれるため、飽きることなく食事を楽しむことができます。

食事を楽しいと感じることができれば、積極的に食事をとることができ、健康に意識を向ける余裕も生まれるでしょう。

シニアのあんしん相談室では、全国の宅配食事サービスを簡単に比較できます。業者ごとのコース内容や値段、口コミをまとめてチェックできます。

また、無料で試食を行える業者もあるため、お試し感覚で一度試してみるのも良いでしょう。是非一度ご活用ください。

宅配食事を探す

監修者コメント

実際、食べ物の大きさと口腔機能が合わず、食べたいものが食べられなくなり、栄養失調につながるケースがあります。

宅配弁当を利用したり、補助的に栄養補助食品を使用してみるといいでしょう。定期的に歯科診療を受診することも忘れずに。

高齢者の栄養素不足のリスクと対策【まとめ】

本記事では、高齢者の栄養素不足によるリスクや、低栄養を起こす原因、対策などについて解説しました。

栄養素の不足が続けば低栄養状態となってしまいます。低栄養は「筋肉量の低下→活動量の減少→食欲の低下」と負のスパイラルに陥りやすいため、どこかで改善を行わなければいけません。

栄養素不足の対策は、「どのような理由で食欲が低下しているのか」「どれくらい食事量が減ったのか」を知ることから始まります。

例えば、精神・心理的要因によって食欲が低下している場合は、栄養バランスの整った食事も大切ですが、適度な運動や共食も効果的と言えます。心の健康を改善することも効果的です。

食べる方の身体や心の状態に合わせて、必要な対策を講じましょう。

栄養管理を徹底した食事を作る負担を減らすには、宅配弁当の利用も検討してみてください。栄養バランスの整った美味しい食事を配達してくれます。

シニアのあんしん相談室では、全国の宅配食事サービスのなかから、食べる方の食形態や病態にあった食事を探すことができます。ぜひ一度ご活用ください。

宅配食事を探す

監修者コメント

両親が普段通り食事をしていても、痩せたように見えたり、疲れていそうと感じた場合には、一度病院に相談してみましょう。

監修

たかぎみなこ

たかぎみなこ

管理栄養士養成課程の大学を卒業し、管理栄養士国家資格を取得。委託給食会社に就職し、高齢者施設の調理現場に従事。高齢者施設の管理栄養士に転職し、栄養ケアマネジメント業務に従事。病態や低栄養、経口維持に合わせた献立提案や栄養補助食品を活用し、多くの高齢者に最期まで食事から楽しむことを支援する。

介護報酬の加算関係書類や給食関係書類の作成、新規施設のオープン準備、委員会の運営、食品衛生研修の講師など、施設運営にも関わる。

note:https://note.com/konamina828/n/nd319662ba995

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